漫画不感症なんです。と云っても、完全にどんな作品も楽しめないと云うわけではありません。ハードルが高くなっちゃった、と云うのがより正確かもしれませんね。それなりにいい歳になってきましたので、ちょっとでも面白くないと感じてしまうと、全く読み進められなくなる始末です。
とは云え。
僕もそれなりに漫画作品を、読んできましたので、どうしてもオススメしたくて仕方ないものを、紹介したいと思います。
私的保存版です。
【保存版】死ぬ迄に読むべき傑作漫画
基本ルールとして、短編でも長編でも、完結している作品のみに限らせて頂きます。最後の最後で駄作になる可能性もありますからね。
01.無限の住人
- 作者: 沙村広明
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2012/09/28
- メディア: Kindle版
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不死の身体を手に入れた浪人の主人公「卍(まんじ)」と、最強の剣術を目指す剣客集団「逸刀流」との戦いを軸に、様々な人間模様が錯綜します。時代劇でありながら世界がスタイリッシュに感じられるのは、作者が持ち込んだオリジナル設定が余りに荒唐無稽で余りに魅力的だからでしょう。
生きる目的とは、生きる意味とは、強さとは……。
色々の感情が揺さぶられる、ファンタジー時代劇漫画の傑作!全30巻なので読み易いボリュームなのも◎。
02.BLAME!
- 作者: 弐瓶勉
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2015/04/23
- メディア: Kindle版
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今をときめく弐瓶勉さんのデビュー作にして、後の作品群の土台となる世界設定の発端になっている作品です。日本のサイバーパンク、ハードSFは、士郎正宗以降長く停滞していた感があったものの、弐瓶勉デビューにより新たな地平を開拓したと云えます。
骨太な世界設定は強烈な個性を発散しているために、序盤でヘコタレそうになりますが、ちょっとだけ頑張って読んでみてください。
どんどん面白くなっていきますから。
物語の基本は主人公の霧亥 (Killy)が、ネット端末遺伝子を求めて都市構造体の探索を続ける形です。遺跡として登場する企業「東亜重工」は、近年の作品「シドニアの騎士」でも登場しますね。
全10巻ですからアっと云う間に読めてしまいますが、一度読んだだけでは理解できないと思いますので、繰り返し楽しむ事をオススメします。
03.僕の地球を守って
ぼく地球(ぼくたま)も外せない作品ですねー。この作品は、輪廻転生した主人公や様々な人間達の「前世の記憶」を軸として、時を越えた恋愛を描くSFです。と書くと、意味全然わかんないですね。物語は丁寧な語りで進行するのでちゃんと着いていけますよ。
一人だけ転生が遅れた輪くんの、前世でのドラマには胸が締め付けられます。
もー切ないわー。
少女漫画という表現をとってはいますけども、少女漫画を読まない方にも是非勧めたいですね。アニメ作品も過去に制作されていますが物語序盤だけなので無視してオッケーです。ちゃんと原作を読んでください。
04.るきさん
- 作者: 高野文子
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 1993/06
- メディア: 単行本
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高野文子さんが大っ好きなんです。ものすごーく長いキャリアの割に作品数がものすごーく少ないのが残念です。まあこれが高野さんのペースなんでしょうね。どの作品もオススメしたい気持ちですが、中でも一番好きで人に読んでもらいたい作品がコレ。一冊読み切りです。
るきさん、と云うマイペースに生きる女性が主人公の、毎日の何気ない出来事がエッセイのように綴られる内容です。この空気感がたまりません。言葉に出来ないナニかが作品ごとに必ず溶け込んでいるのも高野漫画の特徴でしょうか。
特筆すべきは色です。
この作品オールカラーで、色の選び方が絶妙でとにかくいちいちオシャレ。少ない線のシンプルな作画なのに、何故にこんなにも空気を感じる事が出来るんでしょう。
嗚呼、たまらない。
時々扉を開きたくなる不思議な魅力があります。オススメ!
05.天使なんかじゃない
おっさんが勧めるには気の引ける表紙ですが、面白いものは面白いのです。矢沢あいさんと云えばすっかり「NANA」で有名になった感が強いかと思います。しかし少女漫画フォーマットの恋愛もので云えば本作が頂点です。
後の「ご近所物語」 辺りから、現代的な若者の原風景がフィ-チャされるようになりました。しかし良い意味で古臭いのが本作の魅力です。主役の恋人はリーゼントのヤンキー風、ですが矢沢さんが描くと泥臭くないんですよねー。
登場人物はしっかり人間臭く、悩んだり間違ったり凹んだりしながらも、しっかり青春時代を楽しんでいるのが見ていて気持ち良いんです。その上でガッツリ感動させてくれるのは、作家の力量ですね。流石です。
06.ありがとう
- 作者: 山本直樹
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2014/09/15
- メディア: Kindle版
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全作品絨毯爆撃をすると決めているのが、山本直樹さんです。とにかく書店で見たことのない表紙を見つけたら、何も考えずに買います。同じ内容の再編集版であろうと躊躇なく買うのです。
それくらいに、山本直樹という作家に惚れ込んでいるわけです。
そんな山本作品の中でも、コンパクトにまとまった上に「らしさ」が表現されているなと思うのがこの作品です。
元々はエロ漫画作家として世に登場した彼のエロに対する個性は際立っています。時に退廃的であったり時に暴力性を帯びていたり、時に美しい詩的な内容であったり。
この作品に登場する家族は、完全に崩壊していて4人がまるで違った明日を見ているのですが、それでもなんとか家族の形を維持している状態が面白いんですよねー。
鈴木一郎(父)が単身赴任から帰ってみると、自宅では母はアルコール漬けでぼんやりしているだけ、姉はクスリで朦朧とし誰とも知れない不良を連れ込んで倒錯的セックスやり放題。家の中には多くの不良が入り込んで好き放題をやっていた。すっかり荒廃した家庭を見た父はどうするのか、と云うのが冒頭です。もはや家庭が戦場となる時代感覚。
全4巻ですから、サラリと読めます。語り口や絵が気に入ったら、その他の作品を開拓してく事をオススメします。山本漫画については、別エントリでとっくり語らねば、とは思っていますけどね。
07.僕とフリオと校庭で
ぼくとフリオと校庭で (双葉文庫―名作シリーズ (も-09-01))
- 作者: 諸星大二郎
- 出版社/メーカー: 双葉社
- 発売日: 2006/12
- メディア: 文庫
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怪作家、諸星大二郎の初期有名作品です。エヴァのモデルとなったのがこの作品に登場する巨人であった事も有名でしょうか。
この作品に限らず、諸星作品の最も特徴的で魅力を放つ要素は、異世界への入り口が実は日常生活に潜んでいると云う仕掛けです。いつもの帰り道と違う一本となりの路地の先は、何か得体の知れない世界つながっているのかもしれない、という薄ら怖い世界観。毎日見ている何気ない風景は、本当にソコに存在しているのか、と云うプリミティヴな恐怖をじっくりしっかり呼び起こしてくれるのです。
都市伝説や集落の云い伝えなど、現代では失われつつある日常的不安を漫画に焼き付けた作品を望むのなら、諸星漫画ですよ。いつまでも変わり映えのしない絵柄も、微妙に不安を掻き立てられます。
夜ひとりで居る時には思い出したくない、でも読んでしまう、そんな作品なのです。
08.ドラえもん のび太の宇宙開拓史
大長編ドラえもん (Vol.2) のび太の宇宙開拓史(てんとう虫コミックス)
- 作者: 藤子・F・不二雄
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 1984/03
- メディア: コミック
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大長編ドラえもんは、どれも素晴らしいのですが初期SFの名作がこれ。コーヤコーヤ星でスーパーマンとして活躍するのび太を見ては、なんだか勇気づけられたのを思い出します。登場する動物や道具もシンプルながら楽しいもので、物語のまとまりとしてもしっかり着地してくれます。
近年では新声優陣でリメイクされた映画も公開されていましたね。でも、ソレはソレ、原作を読んでください。
大長編では、ジャイアン、スネ夫、しずかちゃん、との5人パーティがデフォルトになりがちですが、本作は概ねのび太とドラえもんの二人だけで物事を進めていきます。のび太の成長物語としても楽しめる傑作です。
やはり藤子・F・不二雄はSFが最高に面白いのです。
09.ウイングマン
- 作者: 桂正和
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 1983/08
- メディア: コミック
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桂正和はヒーローものが光る作家、だと思うんですよね。デビュー作品の「ツバサ」を元に、週刊少年ジャンプで連載していた本作。後の作品へとつながるアイデアや作風など、連載の中で次々と発見しているのが垣間見えます。
ウイングマン後半時点で既に、女性のおしりに対する偏執的な拘りが発露していたのも特筆すべきでしょうか。
漫画描きとしての技量は発展途上の時代ですが、むき出しの趣向、性癖で描かれた無軌道っぷりは、今はもう描けないものなんだろうなぁと想像するわけです。
ただし、桂正和的なデザインの繊細さはしっかり表現されていて、作品の魅力となっています。
シンプルな展開と判りやすい設定が秀逸な作品です。
10.地球へ…
後にも先にも、竹宮先生のこの作品を超えるSF作品はなかなか発表されていないのでは?少女漫画か否かはこの際どうでも良い議論で、重厚な世界設定と軽妙なストーリーテリングによって、本作はSF作品の金字塔足り得ています。
管理社会で生き抜く人類と、管理社会を拒絶し地球から遠い植民星で育った新人類「ミュウ」との闘いを軸に、壮大な人間模様を描き出します。
権力と反権力など比喩的なテーマが多く溶け込んでいるのも、竹宮作品の魅力の一つです。ただ一方の側から眺めていたのでは真実は見えてこないのだ、と。
異者との対立、共存、と云うテーマは、後のアニメや漫画で幾度となく繰り返し表現されたワケですが、その系譜の根本近くにあるのが、「地球へ…」だと思います。
11.火の鳥 未来編
「火の鳥」自体、 日本漫画の中では重要な作品として位置づけられているかとは思いますが、中でも未来編の壮大さはずば抜けています。この未来編を読み終わると、いつも5歳くらい歳をとってしまったのではないかと思えるほどに、時間の流れを感じる感覚がふわふわして不思議な体験となるのです。
物語の主人公マサトは、全く本人の意向とは無関係に、火の鳥の力によって不老不死の体にされていまします。彼は人類の終末を見届け、そしてその後何十億年にも渡って新しい人類の登場を待ちながらただただ日々を暮します。この想像を絶する視点を持った作品が他にあるでしょうか。
「一億と二千年あとも愛してる」なんて甘い甘い。それよりもっともっと永い間、たった一人で生きる事を強制的に課せられる苦しさは、最も残酷な形で読者に伝えられます。手塚治虫の残酷さはちょっと常軌を逸していまして、読んでいて本当に泣きたくなるほどですが、読み終えた後には何かが自分の中で変わった、ような気分になるから不思議ですね。実際は、いくらかの短い時間を漫画を読むために捧げただけ、なのに。
この作品を読まずに死ねるか、と云いたくなる名作です。どうにかして、とにかく読んでみてください。最悪、未来編だけでも良いですから。
12.童夢
大友漫画をどれか1種類だけ選べと云われるなら「童夢」一択です。この作品に限らず、マンガ表現の地平をグイグイ押し広げた大友さんにして、この作品ほど数多くの実験をやらかした作品はないのではないでしょうか。
本気で「漫画で映画を表現しよう」としていたのは、日本漫画史において手塚治虫と大友克洋の二人だけなんじゃないか、と思っています。緻密な描き込みによる膨大な情報量の多さは、単なる表現主義的な思惑の表れに留まらず、具体的な説得力を持つ状況描写達成の為に必要だったのだ、と想像します。
高野さん、諸星さん、と同じく、日常に潜む異界や違和感、不自然、と云うテーマが地下水脈として流れていて、各作家が独自の切り取り方をした結果、こんなにも解釈の幅がある漫画表現のシーンが出来た事は、日本漫画の幸福としか思えません。
あそういえば、大友さんも高野さんも、ニューウェイヴという括りで世に登場した人達でしたね。
あ、物語の内容についてナニも書いてませんね。ま、いっか。とにかく革命的に優れた作品なので、我々は明日死んでしまうかもしれないし今すぐ読んで読んで!
13.めぞん一刻
この作品に初めて触れたのは、小学3年生でした。それまで、コロコロコミックスやジャンプコミックスしか読んだ事のない少年は、必死にコスモを燃やす事だけを考えていたものですが、ある日廃品回収手伝いの際に拾った漫画に大きなショックを受けます。それがこの「めぞん一刻」との出逢いでした。
まず、ナニも不思議な事が起こらない日常をちょっとした笑い程度の味付けで漫画として描いている事自体がショッキングでした。そして、ヒロイン音無響子がヒロインらしからぬ所帯じみており、普通の我儘も持ち合わせた女性として描かれている事さえも。
しかも絵柄は、あの荒唐無稽の金太郎飴「うる星やつら」と同じとは。もう漫画というメディアはワケが判らない!と当時思ったものです。
物語は、一刻館というアパートを舞台に、亡夫を忘れられない未亡人の響子さんと住人達の間で展開するホームドラマです。うだつの上がらない予備校生〜フリーターである五代くんとの、恋の鞘当てが物語のクライマックスへと向かう駆動力になっていくのですが、とにかくハッキリしない男と女にイッライラする漫画でもあります。 ただこの作品を読んで、大人ってのははっきり出来ない事もあるんだなーと、分からないながらも想像していましたね。
多分今読んでも、古さは感じないんじゃないでしょうか。娘を持つ身となった今では、また違った感慨を持てるかもしれないなーと思いつつ、ちょっと怖くて読めない作品でもあります。その意味は読んだらかりますよ。
14.デビルマン
この大きな風呂敷(設定)をこんなにも見事に畳む事が出来た作品は、デビルマンと云う例が、ただ1例があるのみです。 たった1例しかないんですよ。それも奇跡的に。
多くの場合、壮大な風呂敷を広げるだけ広げてまともに畳めずにグダグダに終わっていくか、広げた勢いでそのまま破りきるか、別の風呂敷にスルリと代えてコジンマリと畳むか、このいずれかに決着しがちですよね。
デビルマンしか成し得なかった快挙を、それでも作家達は目指してしまうんですよね。達成出来た状態があまりにも魅力的だからでしょう。でもそうはならない。デビルマンにおいても、殆ど事故みたいなもんだったんじゃないでしょうか。
物語は、元々地球の覇者だったデーモン族が長い眠りから目覚めると、人間と云う新たな人類が地球を支配していた事が真の始まりです。人間への総攻撃を前に、飛鳥了の手引きで不動明はデビルマンとして生まれ変わります。大切な人々を守る為に人間である事を棄てて戦う決意を胸に。しかしデーモン族の作戦は巧妙で人間同士の不信感を利用し人類を自滅させようと画策し、それは大成功していくのでした。人類の未来は果たして……。
弱者の論理が見事に表現されているのもこの作品の特徴の一つです。不動明の悲しい運命には、読む度に心臓を掻き毟られるような気持ちになります。
間違いなく刺激は強いのですが、未読ならぜひ。
15.自虐の歌
最後は4コマ漫画作品です。ただし、4コマだからと侮るなかれ。この作品は、思い切り泣ける感動作なのです。
上下巻にまとめられており実に読みやすいのですが、上巻は正直フツーの4コマギャグ漫画です。なんだったらちょっと面白くない話も交じっています。しかし、物語は緩やかに転がり始めます。
ある貧乏な夫婦のダメ亭主と苦労人の嫁のお笑い人情話的作品かと思いきや、二人の人生には壮絶なドラマが隠されていた、と云う展開が待っているのです。人間として大事なものは何なのか、人を愛するとはどういう事なのか、まさかそんなテーマを投げつけられる事になろうとは、上巻の扉を開いた時点で誰が想像できるでしょう。
読み終えた後、爽やかな気分になれる傑作です。
最後に
一気に書きました。なんだか思っていたよりも文字数を使ってしまいました。読んでくださってありがとうございます、感謝感謝。
さて15冊ご紹介しましたが、まだ書き足りていません。死ぬ迄に是非読んでいただきたい作品はもう少しあります。いずれ続きを書こうと思いますので、それまでに15作品を読んでおいてくださいね!■■
ぼくの地球を守って 全12巻完結(文庫版)(白泉社文庫) [マーケットプレイス コミックセット]
- 作者: 日渡早紀
- 出版社/メーカー: 白泉社
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天使なんかじゃない 完全版全4巻 完結セット (愛蔵版コミックス)
- 作者: 矢沢あい
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2010/11/01
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