「クローバーフィールド」を観た感想は『怪獣映画の新しい境地を見た』だった

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クローバーフィールドを観た。結論から云うと、僕にとっては感動という言葉が出るほどの大傑作でした。総ての要素について完全に納得し手放しで賞賛したいかと云うとそうではないのですが、こう云った種類の映画では最高峰の出来映えである事は間違いありません。

 以下、内容に触れることを書いてしまいますので、もしこの映画を観ようと思っている人は読まれませんよう。

基本情報

クローバーフィールド/HAKAISHA スペシャル・コレクターズ・エディション [Blu-ray]

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ヒットメーカー、J・J・エイブラムスが製作を手掛けた体感型SFパニックアクション。ニューヨークを襲った未曽有の大惨事。ロブ・ホーキンスは偶然にも、巨大な“何か”に襲われ大混乱に陥った一部始終をビデオカメラに収めていた。

感想

そもそも意味深で不明瞭なトレーラーが、この映画に対する興味の第一歩でした。報道映像のようなハンディカム映像が映し出すのは、突如爆破される遠方の高層ビル群、人々の混乱、市街戦が行われたかのような荒れ果てた街、そこに転がり落ちてくる「自由の女神」の巨大な頭部

 扇情的なキャプションやテクニカルなカット割などで構成される予告編とは明らかに趣きの違う内容だったのを覚えています。「ブレアウィッチ・プロジェクト」の大規模版かな?と感じた人は多かったでしょうね。

 手法としてはブレアウィッチ的である部分は確かにあるものの、クローバーフィールドのイかせどころはソコではありませんでした。

怪獣映画として観るべき

この映画は、物凄く良く出来た怪獣映画です。本当は怪獣というキーワードを知らないまま見たほうが楽しめると思います。この映画は、本当に都市に怪獣が現れた時に起こる出来事のリアルなシミュレーションという切り口を、人間の体感というフォーマットでまとめ切った作品でした。

 怪獣映画として、ここまで徹底したリアリティを追求したものはこれまで無かったんじゃないでしょうか。

 平成ガメラのシリーズでは、樋口特技監督の卓越したセンスで人間視点の映像というものを実現し大いに怪獣映画のエポック足り得ましたが、その数歩先の発想で怪獣を描きながら更に、ハンディカムの記録映像という演出的制約の中、人間のドラマを見事に絡めることに成功しています。ため息の出る程完成度の高い映画だと思いました。感動。

 怪獣映画と云うだけで、子供向けの稚拙な物語だと思わないで欲しいのです。怪獣の存在は単なるメタファであり、重要な要素ではありますがこの作品においては本質ではないように思うのです。

 物語の最後まで、この怪獣の存在や行く末は明確には語られません。タイトルの意味さえ不明のまま。あくまで人間一人の体感記録なので、神の視点的内容も映像も一切含まれないからです。そこに文句を言いたくなる理屈マニアは、映画の楽しみ方を随分と幅狭いものと解釈して損していると思うんですよね。

最後に

ところで、今作を制作したBAD ROBOTというプロダクションは最高です。この作品が設立第一弾の作品らしいのですが、ILMやDREAM WORKSのような毛色とは全く違うセンスを感じました。■■

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