「スカイクロラ」を観た感想は『彼なりに頑張ったね』だった

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押井守監督の「スカイクロラ」を観ました。押井監督の作品は概ね好きなんです。ネタバレありで書きますのでご注意を。

基本情報

スカイ・クロラ [DVD]

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日本が誇るアニメ界の巨匠・押井守監督が手掛けた長編SFアニメ。現代に似たもう一つの世界。平和を実感するために“ショーとしての戦争”が行われる中、思春期のまま戦闘機のパイロットとなることを余儀なくされた通称“キルドレ”たちの運命を描く。 

感想

今作も、全体として低温のテンションを保ちながら、誰が観ても間違いようのない単純な物語性やメッセージと云った平易な表現はごく少なく、観る側に思考や感覚のシミュレートを要求するような内容でした。そう、ひねくれた僕はこう云う感じが好きなのです。ある意味ではストイックと云えるし、ある意味では観客を突き放した姿勢とも云えます。

 いつも思うのは、押井監督には表現し伝えたいことがナニかあるから作品を創っているんだろうなと云う想像です。明らかにこれは青春映画、だと思うんですよ。押井守って、ロマンチストなのよねー。ただいつも、ものすごーく判りにくいんです。娯楽作品としてはギリギリ、いやモロにアウトなレベルです。

 今作、押井作品としては判り易いんです。彼なりに、色々な人に伝わる事を期待して、自分の感覚が許す範囲の最北まで判り易くしているに違いありません。そのものズバリを云っている、という感じです。ものすごく判り易く映画的記号の読み方をしっかり踏襲しているんです。よく頑張ったね、と云う感じ。

 ただ、その演出と云うか監督の思考上の仕草が結構クール(不親切)なものですから、観る側の感覚が上滑りしてしまう可能性はあるなと思いますね。所謂、SF娯楽作品と呼ぶには派手さに欠ける、と云われそうです。

 僕としては十分に見せ場があると思いますし、ドッグファイトの演出には震えるような感動がありました。ただ、押井作品の見方を無意識にテンプレートとして使っている自覚もあり、ニュートラルな方がどんな反応を示すのか想像しにくいんです。物語のディテールや、登場人物の感情のヒダ、すべての要素を懇切丁寧に陳列されないと物語に入っていけないような人には、意味の判らないつまらない映画に見えるかもしれません。

 CG表現には最後まで戸惑いが残りました。好みの部分かもしれませんが、セルアニメの表現とシェーディングのマッチングについてはどうしても違和感が拭いきれませんでした。リミテッドの表現とフルアニメの表現においてはイメージの乖離が激しく、感覚が瞬時にリセットされると云うことが度々起こってしまいました。3DCGにおける表現がなかなか良かっただけに、逆に違和感を残すことになってしまっているように見えて、ちょっと勿体ない気がしますね。

最後に

キャスティングや主題歌、サウンド、映像、ものすごくお金がかかっていることがよくわかる作品なのに、地味な印象は拭えず興行収入的にはたぶん失敗だったんでしょうね。ヨーロッパ辺りでの評価は期待出来るかもしれません。■■

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