映画「スプリット」を観た感想は『マカヴォイはイイ!けどなぁ』だった

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久しぶりにシャマラン作品を観てきました。

劇場で観た作品では「シックス・センス」以来ですから、実に18年ぶり。

さてさて、出来栄えはどうだったのか。

例によってネタバレを厭わず書き綴るので、ご覧になるご予定のある方はご注意。

感想

本作を劇場で観ようと思った動機は、シャマラン監督の作品だから、ではなく、ジェームズ・マカヴォイが主演しているサイコ映画だから、でした。

大好きなんですよ、ジェームズ・マカヴォイ。

勿論、エックスメンの若返り3部作(勝手に命名)での、プロフェッサーXことチャールズ・エグゼビア役の成果を大評価していたからです。

パトリック・スチュアートのプロフェッサーXはいうまでもなく最高でしたが、ジェームズ・マカヴォイのチャールズは、また違った味わいをこのシリーズに持ち込み、見事に成功したと思います。

原作から連綿と続く、「結局、チャールズとエリックの愛憎劇」というフォーマットも見事に表現され、若きエリックを演じたファスベンダー兄貴との絡みもバッチリでした。

妄想も捗るっつー話です。

シリーズ1作目の「ファースト・ジェネレーション」のラストでは、エリックが弾いた弾丸がチャールズの腰に命中し、この事がきっかけでチャールズは下半身付随となり車椅子生活を余儀なくされるという、運命的な展開でした。

このシーンは、胸が締め付けられる様な想いで観たのを記憶しています。

あ、話を戻しますね。

そんなチャールズを演じたジェームズ・マカヴォイが、多重人格者を演じるサイコ・モノ。

しかもトレーラーによれば少女監禁の話だとか。

そりゃ劇場で観たくもなります。

それなりの期待を持って僕はエキスポ・シティに向かったのでした。

役者の貢献度が高い作品

物語は、仲の良い女子高生2人と、周りと上手く馴染めていない女子高生1人が、あるキッカケで一緒に移動しようとした時に、突然現れたジェームズ・マカヴォイ演じる謎の男の手際良いカチコミによって、拉致監禁されるコトから始まります。

もう、むっさ無駄のない所作でアッサリ車ごと連れ去るのです。

連れ去られた女子高生達は目覚めた部屋が何処なのか判らず不安がる訳ですが、周りと上手く馴染めていないケイシーだけは、実に落ち着いて状況を認識しようとしています。

すると、カチコミ男がパイプ椅子を持って入ってきてハンカチでパタパタと座面をはたいたあとドカっと座り、突然「順番を決めるわ」的な事をいい3人を品定めしてから、お前が最初な、と仲の良い2人の内の1人を指差して出て行きます。

っこっわっ。

馬鹿丸出しで無謀な脱出計画を喚き散らす2人を尻目に、今の情報だけで脱出計画なんか考えても無駄だから、しばらく様子を見て打開策を考えるべきだと、超クールな返答。

むっさカッコこええやん。

でこのケイシーを演じるのは無名の新人女優アニャ・テイラー=ジョイ(Anya Taylor-Joy、1996年4月16日)です。

彼女、劇中では黒髪ストレートロングヘアで、ややかすれ気味のハスキーな声が超魅力的でした。

つーか、がっつりファンになってしまいました。

その他の出演作品を調べてみたところ、長編劇場作品は本作がデビューのようですね。

残念!

僕は基本的に黒髪ストレートロングに滅法弱いのですが、彼女は久々のヒットです。

そしてファニー・フェイスにもめっぽう弱い。

いやー今後の活躍に大期待したいところですなー(おっさん)。

さて。

いい争いをしていると、謎の男が部屋の鍵を開けて入って来て1人を抱えて連れ出そうとします。

泣き叫ぶその子にケイシーは素早く耳打ちする。

「おしっこかけちゃえ」

ケイシーは男が椅子をわざわざハンカチを出してはたいてから座った事から、綺麗好きで神経質な奴だと見抜いた、という描写です。

事実連れ出された後、男の悲鳴が聞こえて連れ出された子は部屋にすぐ戻されます。

失禁した状態で。

こんな風に、ケイシーの状況把握力や洞察力が優れている描写が幾つか続きますが、それには理由があるのだといわんばかりに「ケイシーが幼かった頃に、父、父の弟、と3人で狩りに出掛けた記憶」が断片的に差し挟まれる、という構成です。

基本的なテクニックではありますが、ちゃんと観客の疑問に応える形で展開されるので、丁寧な印象です。

こういうの大事よね、悪くない。

物語は、概ね3つのシークエンスが同時進行する形で進行します。

  1. 謎の男が多重人格者でありその道の権威である老女にカウンセリングを受けている場面
  2. 女子達の脱出計画の場面
  3. ケイシーの幼き日の記憶

こうしたシナリオ構成上の工夫という奴が僕は好きです。

時系列がモンタージュされる事で、失われた事実がパズルのピースのように段々と繋がって行く展開。

ドラマチックな終焉を予感させてくれる感じ。

ただねー。

フツー過ぎた終焉

そういった演出上のテクニック、シナリオ上の構成の妙、などが優れていただけに、おちが弱過ぎてゲンナリしてしまいました。

いや、ゲンナリというほど激しく落胆する事もなかったので、その事がより残念だったとでもいいましょうか。

なんだかフツーに終わった……、みてーな。

判ってる判ってる。

シャマラン作品だからっつって、自分でも知らない内にどんでん返しを期待してしまっていたのは確かにあります。

否定しません。

そうソノトーリ、うっすら期待していたんやと思うよ、うんうん。でもさあ……。

フツーすぎね?

フツーで何が悪いのだ。

フツーってのはそれだけで価値足りえる概念じゃないか。

そもそもフツーってなんだと思っているんだ。

お前のフツーは本当にフツーだと保障出来るのか。

デスヨネー。

だから悪くないんですよ。

よく出来ています。

1,800円分の仕事はキッチリ果たしています。

でもなー(エンドレス)。

最後に

最大のネタバレですが、ラストのラストでこの作品は、シャマラン監督の過去作品である「アンブレイカブル」と繋がります。

で、僕はこの作品を観ていないんです。

つまり、損した側の観客だったって事です。

しかしまーその事を差し引いたとしても、結末は不満でしたね。

役者が良かったし途中までの演出が良かっただけに本当に残念です。

本作続編の制作が決定しますが、僕は劇場に行くかどうか微妙なトコです。■■

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