公開二日目に観てきました。
IMAX3Dです。
きっと3DCG満載のが映像が連発されるでしょうから、少々高いチケット代を支払ってでも、と思っていました。
さて、出来栄えはどうだったのか。
ネタバレを厭わず好き勝手に書きますので、ご覧になられるご予定のある方は自己責任で宜しくお願いしますね。
基本情報
『ゴースト・イン・ザ・シェル』(Ghost in the Shell)は、2017年のアメリカ合衆国のSF映画。士郎正宗の漫画『攻殻機動隊』を原作とし、ルパート・サンダースが監督を務め、ジェイミー・モスとウィリアム・ウィーラー、アーレン・クルーガーが脚本を手掛けている。アメリカでは3月31日、日本では4月7日より公開された。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
感想
僕は「攻殻機動隊」のコミックスから入ったクチです。
というか、士郎正宗先生の作品はデビュー作品「アップルシード」からずっと好きなんですよね。
日本漫画界における士郎先生の独自性は突出しており、異っ常にレベルが高いと思っています。
ハードSF漫画としては、僕的に国内最強です。
ま、大好きなんですね。
「攻殻機動隊」は数ある士郎作品の中でもトップクラスに好きでして、今でも時々読み返しては、アップデイトされた現実世界がジワジワと作品中の世界に近付いている事に気がついて、ドキリとするのです。
この内容を1989年時点で発表していた事に驚くばかりです。
そして、押井守監督が1995年に劇場用アニメーションを完成させたワケですが、原作愛が強いあまり最初は押井版に対して否定的な感情を持っていました。
フチコマ出てねーじゃん。
設定結構に変わってね?
そんな重箱の端をチクチク突く文句を吐き出していたものです。
今思えば、なんともったいない時間を過ごしたものかと後悔するばかりですが、後にしっかり鑑賞してコレはコレでアリ!という気持ちに至りました。
いずれにせよ、原作原理主義者ではある僕なので、その後の「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX」シリーズ、「攻殻機動隊 ARISE」シリーズは、現在追いかけていません。
既に「攻殻機動隊」は概念として存在しておりまして、原作、押井版「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊」、「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX」、「攻殻機動隊 ARISE」、は全てに主人公である草薙素子(くさなぎ もとこ)も、彼女が所属する公安9課も登場していながら、パラレルな存在として独立した設定にコーティングされています。これはもう着いていけないぞ、と。
大好きな原作を今でも楽しめてしまう僕なので、その他の可能性は一旦保留した感じです。
で遂にハリウッド映画の登場。
正直、原作愛が深すぎるケースで実写化されてイイ思いをした経験が殆どないものですから、ヤバいなーとは思っていたんですよね。
ただトレーラーを観た限り、映像そのものは悪くない印象を持ったので、じゃあイッチョ劇場行ってみっか!と思い立ったわけです。
攻殻機動隊らしさは何処に
長々と前置きを書きましたが結論をいいますと、僕には全くフィットしない作品でした。
超ガッカリ。
攻殻機動隊ぽい別のSF映画だった、くらいの感想です。
いやホントそんな感じなんですよ。
映像の観た感じはちゃんと予算がかけられた事の判る、リッチな作りになっています。
そこは最低限の品質を保証してくれていると考えていいでしょう。
しかし、「よくあるハリウッドものの未来観」そのまんまで、目新しさは皆無でした。
無駄に東洋的意匠を施しているのも、むちゃくちゃ古い感じで、「え?今更?」と思わずにはいられませんでしたね……。
映像的な面では明らかに押井版「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊」を下敷きにしているのでその責を負わせるのは筋違い、と思われるかもしれませんが、それは違います。
それならそれで、しっかりガッツリ模倣して、リスペクトして、再現してくれれば文句はいいません。
しかし表面的な映像表現のテイストをコピーしていながら必要の無いアレンジを加えており、しかもソレが安易つーかアリガチつーか、創意工夫の結果として感じるモノが全然なかったんですよね。
いい過ぎでしょうか。
んー。
でも「GHOST IN THE SHELL」の名前を使う以上、しょーもない事したらそりゃ刺されますよね。
気に入らなかった改変箇所は5つ
原作、押井版、からの改変部分で特に気に入らなかった部分を書いてみようと思います。
01.草薙素子の素性
思い切り作品のキモになる部分です。
冒頭、キリアンと云う名前で登場し義体化からたった1年足らずの状態で公安9課のリーダーになっている設定には無理があるなーとは思ったのです。
「少佐」と呼ばれている理由もなんだか曖昧だし。
しかしまあ、海外作品だし名前はしゃーねーな、物語を転がす為に「少佐」云々はいうまい、と自分を無理矢理納得させたワケです。
しかしキリアンが偽名で「草薙素子」が本名だったというオチは「いっらっねー!」って思っちゃいました。
母親に桃井かおりさんを起用した事は、サプライズ的にはアリですが物語の設定やドラマ性としては全くもってナシだと思います。
草薙素子が、単なる家出娘になってしまうなんて……。残念。
おまけに最後は自分の素性を母親に明かしてめでたしめでたし、ってオイ。
02.人形使いとクゼと社長
一番の残念ポイントはココかもしれません。
この映画の悪役は最終的に人形遣いでもクゼでもなく、目的が曖昧な義体メーカーの重役だったと云う結末。
ナニソレ。
狂った思想のテロリストも関係ないし、現実を想起さえる社会問題のヒズミが関与してるワケでもない、フツーに野心をもった悪徳金持ちが黒幕なんですよね。
ソレって、作品の根本的なテーマから大きく乖離してやいませんか?
体制側の理屈とカウンターとしてのテロリズム、またはテクノロジーと哲学といった永遠の命題的対比の構造、なんかが醍醐味だったと思うんですよね。
ソレがスポイルされてしまっていました。
個人を決定するのにはどれだけのパーツが必要なのか?的な、ゴーストの話題も超薄っぺらくて、ホントにこれでいいの!?と愕然としてしまいましたね。
仮に新設定による新しいヴィランを作るにしても、ちゃんと魅力的で脅威足りえるキャラクタを作ってくれていたら、ソレはソレで納得出来たのかもしれませんが、とにかく脇の甘い、計画性の無い、ステレオタイプのキャラクタだったので、完全に気持ちが萎えてしまいました。しょぼーん。
03.公安9課の面々
全然キャラ立ちしない9課のメンツも残念感が噴出していました。
バトーがこんなに頼りにならないキャラクタになっちゃうなんて……。
眼球の義体化も、別に意味なかったし。
トグサは、なんだか下手なコスプレに見えちゃうし……。
イシカワやサイトーはほぼモブだし……。
唯一日本語セリフをしゃべり続けるのが、ビートたけしさん演じる荒巻なんですが、これがね。
なんつーか。
彼自体は好きなんですよ、僕は。
しかしまあ、たけしさんって演技力が強烈な役者って感じじゃないじゃないですか。
味、つーの?雰囲気つーの?
だから、荒巻みたいに喋りや表情だけで凄みを出すような役には、不向きだったんじゃないかなぁと思うんですよねえ。
活舌もそんなに良いワケでもないし……。
使い方の問題だと思うんだよなぁ~。
04.多脚戦車の扱い
色々不満を感じながら観ていたのですが、いよいよクライマックスのバトルで、あの蜘蛛戦車が登場するって事に展開した時は、「しゃーなしやで!ワンチャンだけやで!?ここのバトル良かったら考え直してやらん事もないからな!」という気分になったんです。
最後の温情のつもりで。
しかし、あっつーまに破壊されて終わり。
しかも、押井版と同様に、銃器が通用しないと分かった素子(キリアン)が光学迷彩で突入し義体を破壊してまで物理的破壊を試みるシーンまで入れておきながら、その後のバトーが見せるまさかのサプライズサポートもなければ、ゴースト融合のダイヴもない、なんて。
一瞬期待した分、落胆が大きくなっただけなのでした。
残念です。
05.ネットワークの扱い
これはもう、作品全編に渡る不満です。
ネットワークに関する設定や物語は、視覚化しにくい事もあって、2時間という枠の中で表現するのに向いていないテーマ、ってのは重々承知しています。
実写映画ではほぼ唯一の成功例として「マトリックス」があるだけですしね。
アレでさえ1作目公開当初は「判りにくい」といわれたくらいですから。
原作では存在していたネットワークに関する重厚な物語がバッサリ切り落とされて、つまらない「元サイバー・パンク」作品が量産された歴史をこれまで観て来ましたまら、もはや慣れっこです。
が、本作ではソコは外せなかったんじゃない?と思わずにはいられないのです。
電脳をハッキングする描写もかなーり曖昧でして、とにかく首にジャック刺してるからソレで勘弁して、といわれてるような気がしてとても残念でした。
まー、難しいテーマだってのは判ってるんですけどもね。
でも、でも。嗚呼。
最後に
これ程までに落胆する事って珍しいので、素直に書いてみました。
金返せ、とは思わないんです。
劇場で観れて良かったな、と今でも思っているんですよ、いやマジで。
最高の環境で観てなお良いと思えなかったくらい「良くなかった」のを確認出来たワケですから。
原作ファンの方は、オンデマンドまで待って何かのついでくらいのテンションで観る事をお勧めしたいです。
ホント、ついででイイですからね。
フッツーの映画ですからね。あ、デートで観るくらいでいいかもね。■■
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