今週のお題「20歳」
いかにも一本書けそうなお題だったもので。
そのお題とは「20歳」です。二十歳(はたち)。
いいすねー、なんだか青臭さと大人の両面を兼ね備えたこの語感、この年頃。自分にもそんな時代があったことをつい忘れがちですが、確かにありました。
僕が二十歳の頃は、将来を音楽で食べて生きていくだろうと信じて疑っていなかったとても痛い記憶にまみれています。ちょうど、ゲーム開発のデザイン・アルバイトを始めた頃でもありまして、その時点では完全に腰掛のつもりだったんですね。なんとも偉そうな話ですが、音楽で生きていくと信じているわけですから、ゲーム開発は二の次で当然です。
そんな痛々しい二十歳の自分を振り返ってみたいと思います。
僕の音楽遍歴
さて、音楽で食べていくと云っても漠然とした話で、音楽のどの部分に関わって生きていこうとしていたのか、その目標によって生き方も随分と変わってくるわけです。
そこで僕がそもそも、どうして音楽で食べて生きていこうなどと思い至ったのかを掘り下げてみます。こういうの自分史つーの?音楽という切り口で20歳までの自分を辿ってみようというわけです。
3歳から始まった
僕の音楽的環境と云うか音楽人生(←いい響き!)は、3歳の時に始まりました。当時はまだ吐くほど高かったYAMAHAエレクトーン(実は今でも吐く程高い)を両親が勢い余って購入した挙句、あまつさえたった3歳のわが息子に与え練習させようと決めたことが発端です。今でこそこの暴挙に感謝していますが、本当に何を考えていたんでしょう、僕の両親ズは。ドリーマー過ぎるでしょ。
ビューティフル・ドリーマーさん。
3歳と云えばまだ物心も備わる前です。ほんの気まぐれで「もうやだ」とか云っちゃって二度と触らなくなる可能性さえ充分にあったと云うのに。
両親とも音楽を演奏する事にかけてはズッブズブの素人でしたがリスナーとしてはなかなか拘りを持った人達でして、CDやダブルカセットのデッキなんぞが登場するずっと以前から家にはオープンリールのデッキを備えた物々しいAVラックが組まれていました。
そのAV機器から流れる様々な音楽を日常的に聴かされていた事もあってか、僕はちいこい頃から音楽を聴くのが大好きだったようです。ではその頃の両親の音楽的趣味とはどんなものだったのか。
父親はクラシック一辺倒
父はなんつーか、音楽的な教育を少しは受けていたらしく、いっちょまえにフルート奏者のハシクレだったんだそうです。確かに昔、実家にありましたフルート。まあ僕が子供の頃に折って壊しちゃったんですけどねテヘ。
そんな父は完全にクラシック音楽しか聴かない男で、とりわけベートーベンにドハマリしていました。かろうじてベートーベン以外の音楽を聴くことがあったとしても、クラシック音楽のカテゴリから出てくることはありませんでしたね。
そう云えば、なーんとなくうっすらと「月光」なんかが家でかかっていたような気がします。ただし、当時の僕には退屈過ぎてまったく楽しめませんでしたけども。
後に、この曲は高校生の頃に友人の生演奏により邂逅を果たしまして、大好きになりましたよ。
まあ3歳には陰鬱過ぎますな。
母親が音楽の扉を開けまくってくれた
戦犯はヤツです。いや恩人は、が正解でしょうか。とにかく母親のミーハー感覚(←2016年でも通じる単語なのか心配)が、僕の音楽的バックボーンの礎となったことは間違いありません。3歳の僕にして、この頃の実家で流れていた音楽は今でも大好きな曲ばかりなのは自分でも驚きです。ではその頃にかかりまくっていた曲をいくつか紹介します。
Bicycle Race / QUEEN
恋 / 松山千春
冬の稲妻 / アリス
夢一夜 / 南こうせつ
初恋 / 村下孝蔵
こう云う時代もあったねと、しみじみしてしまうような曲です。少年は皆、純真で一途で無垢だと云う主張(または妄想)が可能であった時代、とでも云いましょうか。
村下孝蔵の瑞々しい詩世界は独自の輝きを放っているなー。つかこれ、BL脳でも楽しめるじゃん!今聴いてもグっとキますよ。この曲も、まー家でよくかかってた!
安奈 / 甲斐バンド
甲斐よしひろは、昭和と共に存在感が薄くなっていったアーティストです。とてと残念ですが。甲斐よしひろがメインボーカルをつとめるのが、甲斐バンド。わかりやすっ!鈴木バンドとか、小林バンドって云ってるのと同じですね。
偏に甲斐よしひろの歌声が特徴的かつ魅力。今聴くと上手いとか下手とかの話題を超越しているなー。女性の名前を曲タイトルにするってのも、そう云えば最近なくなった文化ですね。
Karma Chameleon / Culture Club
これもまた時代の徒花ですなー。辛うじてBL教習所的なグループかもしれません。メインボーカルのボーイ・ジョージががっつり化粧していまして、当時まーこれが美しく見えました。今見ると終始ドヤ顔のPVがややウザ。
曲は、超有名です。サビくらいはご存知では?
とまあ、こう云う音楽が日々の生活を彩る家だったんですね。そんな中、僕は1回/週のエレクトーン・レッスンに連行されるようになります。でどうだったか。
これが結構楽しかったんです。
結果的には、高校受験の15歳まで続けたので、大体12年ちょっとですね。後で両親に聴いたら、10年何か一つの事を習い続けたらそれなりに意味があるだろうと云う期待を込めて、エレクトーンを習わせたんだそうです。なんと、3歳の時点でそんな壮大な期待を、知らずに背負わされていたとは。
そゆの先云ってYO。
小学生時代
さてエレクトーンを習い続けながら僕は小学生にレベルアップします。
チャラララッ・チャッチャッ・チャー
この頃はアニメ脳が急成長した時期です。アニメイトに通いまくり、アニメ映画もOVAも見まくっていました。ちょうどOVAの登場がタイミング的に被ってまして、アニメと云うメディアの可能性がグンッグンに押し広げられた、超エキサイティングな時代です。こんなタイミングで小学生を過ごしてしまったら、ハマるでしょ、そりゃ。
メガゾーン23、幻夢戦記レダ、ウィンダリア、くりいむレモン、バース、妖刀伝、ガルフォース、イクサー1、バブルガムクライシス、天使のたまご、プロジェクトA子、とかとかです(昭和生まれはここで首がもげ落ちる程うなずくトコね)。
当然ながら聴く音楽も、ソッチ方面に偏りますよね。サントラを散々買ったし、ドラマ編LPも買いましたなー。この頃のサントラ話を肴に呑める人を探してますよ、地味に。また、ゲームミュージックにとてつもない魅力が詰まっている事に気がついたのもこの時期です。とは云え、ただ聴くのが好きだったと云うだけの事ではありましたが。
とにかく、無自覚ながらもサブカルチャーへの扉を何枚も開いたのが、小学生時代でした。
中学生時代
チャラララッ・チャッチャッ・チャー
そんな僕とて、中学生にレベルアップした頃には、女性の事を意識し始めたり、自分の未来に対する曖昧模糊とした不安を感じちゃったり、まーまー人並みの思春期を迎えます。つい数ヶ月前まで大好きだったアニメを突然嫌いになりはしませんでしたが、なんだかもっと自分には考えなくてはならない事があるのかもしれない……、なんてイタイ思考に迷い込んでしまいがちでした。
中学生ってそんなんでしょ。
そしてやはり、時代とのリンクは出来過ぎと云える程出来過ぎていまして、世に云う「バンド・ブーム」とランデブーしてしまうのです。
中学生にThe Blue Heartsなんか聴かせたら1発でハマるに決まってますよね!僕は瞬殺でした。中学生の脳味噌には、「未来は僕らの手の中」や「チェルノブイリ」や「リンダ・リンダ」は、ダイレクト過ぎて回避不可能なんです。
この頃もまだエレクトーンを習い続けていました。しかし、リンダ・リンダを弾くには鍵盤ではなくギターが必要だったんですね。そこで僕は倉庫に眠っていた母のアコースティック・ギターを引っ張り出してくるのです。
後で知りましたが、クラシック・ギターだったんですね。弦は柔らかいモノが張られていましたが、とにかくネックがぶっといんです。もう、バレーコードのAポジションが、どう頑張ってもまともに鳴らない。全っ然リンダ・リンダなんか弾けないわけです。そらそーです。エレキ・ギターとクラシック・ギターでは、奏法も、適した音楽もまるで違うのです。しかし、その事を知るのはもっともっと後……。
そこでなんとかしてギターを上手くなりたい僕は、練習曲を路線変更する事で自身の納得を獲得します。つまり、アコギの曲を練習しようと。
立ち上がって来たのが長渕剛!
実際、かなり昔から母が好きで聴き慣れていたのが大きかったですね。僕はギターのコードブックなるものを手に入れて、指の先から血が出るまで、いや血が出てもなお練習を続けて、なんとか弾きながら歌うと云う「とくぎ」を手に入れるのです。左手指先のカサブタとともに。
チャラララッ・チャッチャッ・チャー
この時に、数年にわたるエレクトーンのレッスン経験が大いに役立ったのは間違いありません。
一度ハードルを越えると、そこからのジャンプアップは速かったのです。どんどん弾き語りレパートリーが増えるのは、超気持ちよかったなー!
そんな事を自分の中で発酵させていたのですが、遂に友人の中に1人、現れたのです。
何が?
「バンドやろうぜ!」と云ってくるヤツが!
噂は本当でした。中学生でギターを弾いていたら何処からともなくバンドへのお誘いが舞い込むと云う噂は。
エレクトーンの発表会では数日前から腹痛を感じてしまう程にデリケイト系ナイーブ男子だった僕なのに、バンド結成へのお誘いは回避不可能です。
アコギでは長渕剛や尾崎豊を練習していた僕ですか、リスナーとしての僕の耳はパンクに傾倒していました。The Blue Heartsを入り口にして、ラフィン・ノーズやコブラを経由したのち、Ramons、Sex Pistolsに到達していました。
ご存知ですか、Sex Pistols。なんつーバンド名をつけてくれるんでしょう。中学生の僕は好んで聴いていながらも、恥ずかしくて迂闊にバンド名を口にする事さえ出来ない状態だったんですよ。
そしてこのバンドには、伝説的なベーシストが在籍していました。いや、ベーシストって云ってもいいのか……。
シド・ヴィシャスです。
え?知らない?うそーん。ほらほら、椎名林檎の歌に出てくるでしょ、「現〜代〜のシィ〜ド・ヴィシャ〜スゥにぃ〜手〜錠〜」とか、タイトルでも「シドと白昼夢」とか、あれあれ、あれの事あれの事、ふうーアッブネーアブネー、ぼっちンなるとこだったぜ!
でね。Sex Pistolsのベーシストであるシドはベーシストとしてのの力量は全然ナってなかったんですが、存在感つの?アティテュードつの?が、半端なくカッコ良かったんですよね。LIVE中に、ベースのヘッドで客の頭を殴りつけただの、まともに演奏出来ない程にマリファナ吸ってステージに上がっただの、本当みたいな嘘っぽい逸話が溢れかえっているわけです。
今だと直ぐにスマートフォンなんぞ取り出して、Google先生に聞けば幾らでも情報が引き出せますけど、この頃はパソコンが家庭用電化製品の標準装備になるずっと以前ですから、それっぽーい噂が蔓延しがちでした。
そう云ったわけで話を戻しますと、僕はベーシストに憧れていたんですね(←なっがっ)。
バンドに誘われた時に、どう云うわけか勝手に自分はベーシストとして誘われたのだと思い込んでいました。もう、楽器店にカタログを取りに行っちゃったりなんかして、fenderかなー、やっぱプレベかなー、などと云うウフフ時間を過ごしたりもしました。がしかし。僕は、キーボーディストとして誘われたのでした。
あー。あーね。ですよねー。エレクトーン習ってるってみんな知ってるもんね。
しかも、メンバーの1人はフライングして先にベースを買ってくる始末です。地味に凹んでいましたが、バンドの練習は開始されるのです。当時は僕以外のメンバーが全員初めて楽器を触るとか云ってる状態でしたから、とにかく難しい目標は捨てて、キーボードが目立ってて(取り繕う事が出来て)、知名度のある曲を選ぼうと云う事になります。ヘタクソでも有名曲だったら脳内補完してくれるんじゃね?と云う図々しい期待感があったのは云うまでもありません。
そうして選ばれたのは、ハウンドドッグのフォルテシモと、BON JOVIのYou give love a bad nameです。
ナニその選曲?!
身の程知らず、ってこう云う時に使うんですよ。今なら、最初はRAMONSからヤろうぜとか云えますけど、この頃の中学生脳は無軌道なヤル気と無根拠な過信と無遠慮な自己肯定にマミレテいました、ええ、ええ、イタイです、イタイですとも。
なんやかんやあって(←w)生まれて初めてのバンドとしての演奏は、なんとか成功に終わります。
成功しちゃったんですよね。
あ、舞台は文化祭の演劇の幕間に設定された、有志の余興コーナーですけどね。人生で初めての喝采に、ドーパミンとエンドルフィンが耳から吹き出すんじゃないかと思う程にエキサイトしました。すぐさまメンバーは、次の発表の場を求めて練習を始めます。しかしそこで、僕はいきなり経験するのです。
メンバーの離脱と云う事件を。
いやー。本当にあるんですねー、メンバーの離脱って!ドラムを担当していたナカガワくんは、なんかむずかしいしおもんない的な理由でサラーっとやめて行きました。陸上部のエースくんだったからなー。そして、エレクトーンを習っているんだから両手両足バラバラに動くよね、と云う視線が一斉に僕に降り注ぐ事になりました。
ん〜じゃあ一丁やってみっか!
事実、四肢が別の動きをするような曲をエレクトーンでは弾いていたりしたので、まあ向いているんじゃないかな〜と思ったんですね。
高校生時代
中学生の間は比較的マトモな学校生活を送っていた事もあって第一志望の高校に合格します。そこで待っていたのは、自分の好きな事に猪突猛進する快感に目覚めた馬鹿者の学生生活です!ともかく、全然勉強もせずにいい事もわるい事もたくさん経験して遊び倒しました。
いい事の1つはハードロック・ヘヴィメタルです。
QUEENがココでも立ち上がって来ます。しかし当時のヒーローは、なんと云ってもMR.BIGでしょう。全員歌えるスーパーバンドです。しかも全員超テクニカルな達人ばかり。そらハマりますわ、しゃーないしゃーない!この頃には複雑なリズムにも興味が湧きまくり、地味なゴーストノートやツーバスドコドコにも憧れていましたから、海外のアーティストに対する憧れが爆発してしまいます。
ヘタクソながら、コピーしまくりました。この、なんとなく間違っている気がするけど概ね出来てるから次の曲コピーしよ!的なだらしのない音楽体験は、知識を広めると云う点においてのみ、大いに意味がありました!
テープが切れるまで聴き倒しました。
大学時代
不真面目な高校時代であったにも関わらず、第一志望の芸術系大学に滑り込む事に成功した僕は、大学の課題もソコソコに、すぐさま軽音楽部に所属して部室と云う名のスタジオに入り浸るようになります。そして、大学受験に向けて通っていた画塾の先輩と一緒にバンドを組み、一回生のくせに「新入生歓迎ダンスパーティー」に出演する事に成功します。ハッキリ云ってズルですけど、叩かせてくれるってんだからいいじゃん!と開き直っていました。周りの人達が暖かだったんでしょうねw
このケーオン入部をきっかけに、僕の音楽大陸は突然の拡大時代を迎えます。つまり、芸大なんて場所には偏った趣味の先人で溢れかえっているものですから、それまで1度も聴いたことの無いような音楽に、出会いまくったわけです。
1番の事件はやはりMETALLICAを知った事でしょうか。いまだに良く聴いている生涯フェイバリッドグループです。このバンドのドラマーであるラーズ・ウルリッヒのツーバスドコドコを聴いて、ついに僕はツインペダルの購入を決意します。
ってまだ買ってなかったんか!
高かったんだもの……。でも、ラーズのツーバスは金銭的苦境がもたらす不自由を簡単に飛び越えさせてくれました!
こうして僕は、ツーバス人生を無事始める事が出来たわけです。良かった良かった。
METALLICAの存在認識をキッカケに、メタル界隈にジワジワと踏み込んでいき、様々なバンドのLIVEに行きまくりました。大学時代に観たLIVEで1番の想い出は、MEGADETHですなー。ほーんと良かったわー。マーティ・フリードマン在籍時のツアーでした。またこの当時のドラマー、ニック・メンザが上手かった!今になって振り返れば、タイトなドラミングに傾倒していくキッカケだったなーと思いますね。
メタル界隈をウロついている内に、段々とより極端な、より過激な音世界に歩み寄って行きました。まあ、若者にはありがちな展開でしょう。そして当時は、モダン・ヘヴィネスなるムーブメントがあるバンドの成功によって、メタル界隈を席巻しつつある時代でした。そのバンドがPANTERAです。
パンテラ……って、日本人にとってはビミョーなバンド名ですけどね。
このバンドのドラマーは、超個性的な大柄男ヴィニー・ポールです。マシンの如き超タイトで正確なドラミングでありながら、人の揺らぎと云うかグルーヴつの?身体を動かさずにはいられないリズムを叩きよるんですなー、たまりまへんなー。
もちろんながら、このバンドの曲も、コピーしまくる事になります。
大学時代は、本当に色々の音楽に出会いました。あんなに多くの音楽を聴いたのは、後にも先にもあの頃だけです。グランジ、ミクスチャ、ハードコア・パンク、ロカビリー、デスメタル、ブラックメタル、グラインドコア、カオティックコア、 ノイズ、メロコア、スカ、などなどとにかく先ずは聴いてみるの精神で自分の趣味世界を育てていました。
地下音楽への入り口は、やはり、NAPALM DEATHですなー。
ジャンルとしては一応グラインド・コアつー事になっていますが、まあカテゴライズはあまり意味を持っていませんね。ただただ喧しいだけの音を求めていたわけではなく、ちゃんと聴いて鑑賞して、楽しむポイントを見つけてはニヤニヤしていました。この頃にはツーバスドコドコから、ブラストビートに興味の対象は移っており、とにかく黙々と古雑誌を叩いて練習をしていました、とさ!
最後に
とまあ、かなり端折りまくりましたが、僕の音楽遍歴を二十歳まで書いてみました。完全に、僕にとっての娯楽エントリですながはは。■■
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