「レッドクリフ」を観た感想は『これは少年ジャンプ映画だ!』だった

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いつものごとく、ネタバレ全開の感想を書くので見る予定の人はお読みになられませんように。「レッドクリフ」を観ました。三国志演義における見せ場の一つ「赤壁の戦い」を2部作で実写映画化した、ジョン・ウー監督作品です。もともと「三国志」にま−ったく思い入れの無い僕ではあるのですが、たぶん壮大なスケールで判り易く楽しませてくれる映画なんだろうという期待を持って画面に向かったところ、正にその通ーりの内容でした。

基本情報

レッドクリフ Part I ブルーレイ [Blu-ray]

 

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 はるか昔、生きる意味を戦いに求めた時代。

天下統一という野望に燃える曹操は80万の兵力を使い、怒涛のごとく敵国を攻めていた。誰もがその勢力に圧倒されたとき、立ち上がった二人の男がいた。一人は、劉備軍の若き天才軍師、諸葛孔明。もう一人は孫権軍の知将、周瑜。二人は、その巨大な勢力に立ち向かうため、連合軍を結成する。その数、わずか6万。兵力で劣る連合軍は、 知略と奇策によって戦いに挑んでいく。

だが、曹操の野望の裏には、一人の女への秘められた目的があった・・・。張り巡らされる策略の数々、それを支える兵士たち。国のため、友のため、そして愛する人たちのため・・・決戦の火蓋が切って落とされる!!

感想

簡単に言えば、「600万部発行時代の週刊少年ジャンプ的馬鹿漫画の系譜に即した友情バトルもの」です(言いたかっただけ)。もちろんこれは褒め言葉なのです。

 馬鹿漫画という言葉の意味は、「強い事に理由など無い」というスタンスで物語構築をしているということ。理由が用意されていても、ほとんど意味のない理由だったりするわけです。

 「ヤツは猛将である」と言えばそうで、「ヤツはこんなことでは死なん」と言えばそうなのです。また、とにかく全ての要素をあまりに判りやすく視覚化しており、小学生でも物語を見失う事は無いような漫画っぷりがあります。

 周瑜(しゅうゆ)と諸葛亮(しょかつりょう)の琴バトルのシーンなどは身悶えする程に判りやすいです。助けを求める為に周瑜の元を訪れた諸葛亮、二人の会見中唐突に琴のセッションが始まるのですが、「たしなむ程度です」と謙遜する諸葛亮はこれでもかというくらいにガンガン演奏するし、それを見た周瑜も大人げ無く凄まじいピックさばきで応戦します。

 スティーヴ・ヴァイとビリー・シーン、とは言い過ぎかな、うん言い過ぎました……。

 そして本題を一切話さないまま去る諸葛亮は「演奏で答えてくれた、彼は手伝ってくれる」と発言します。周瑜もまた、琴の音色でスッカリ返事をした事になっており、早々と戦気分になっているのでした。

 この展開、完全にジャンプ理論です。

 基本的に「ゆーたもん勝ち」という価値観であらゆる物語が進行します。知略戦を描こうとした場合、背景となる理屈や論理をちゃんと説明出来ていないと、見ていても「どこが凄いのか判らない」という状況になりやすいトコロを、ジョン・ウーは「男の戦い、友情っつーもんはこういうもんなんじゃい!おりゃ!」と、一丁両断しその断面の模様だけを極太マジックでなぞったのですね。

 例えて言うなら、モンゴルマンの目を見てラーメンマンの目と同じだ!と言い切ってしまえるような、アレです。

判り易さは大きな価値

戦い方を含め、前編に渡って「この映画はファンタジーだ!」という主張、演出が満載です。もうこれは「三国志」だと思って見ちゃあいかんのでしょうね。たぶん、映画「300」とアクションゲーム「三国無双」がモトネタやねこれ……あー言っちゃった!!!!!

 つーか9割方正解ですよこれ、間違いありません。「300」でザック監督が作り出した新しい肉弾戦の映像的様式美に、ジョン・ウーは嫉妬したんだと思うんですよね。スローモーションでアクションシーンを撮り続けてきたジョン・ウーにして到達できなかったものが、「300」には間違いなくあった、と。

 コントラスト、カット割、克明な映像描写。しかもその手助けをしたのがコミックアーティストの発想とセンスだったことに、「チキショーー!わしのお家芸とりおってーーー!!」と臍を噛んだ、と思うのです。

 そして更に、日本の企業「コーエー」が展開している三国志解釈の幅広さが実はアクション性に富んだ商品開発に成功していることに目を付け、「よっしゃ!これでいったろ!(くわっ!!)」と目を剥いたに違いありません。関羽の戦闘シーンを見たらわかりますが、どこから見ても「三国無双」です。エフェクト足したらもう完璧。

 物語後半、陸戦の勝利目前で戦局に満足していた諸葛亮が「うまいこといったねー」的視線を投げかけようと周瑜を見ると、そこに居るはずの彼が居ません。はて?と戦場にお視線を移せば、もう周瑜は馬乗って剣振りかざして走ってます!

 軍師が死んだら全っ然ダメなんでしょうけども、そういうことを言うのは野暮です。ココはプロレスの見方をしないと。映画「インディペンデンス・デイ」で、大統領が戦闘機に乗ってるシーンを思い出してください、そうそうあれですあれ。「強い」とか「偉大」とかいうことは、判りやすく視覚化してもらわないとね、子供でも判るように。

小喬はいい嫁なのか

あと、どうしても書いておかなくてはならないのは、美人女優リン・ツーリン演じる小喬(しょうきょう)のことです。

 女優さん自体はめさ綺麗、台湾のトップモデルらしいですね。そもそもがどういう人物として描かれているのか知らないので僕としては丁度いいのですが、とにかく夫の周瑜にデレデレ。

 もうウザいくらいデレデレ。

 綺麗な顔でちょっと半開きの口で心配そうな目をして出陣前の周瑜を見送る、と書けば悪くないシーンに思えるが実際はもーウザいったらないのです。監督がこんな嫁さんを望んでたのかな〜。

 戦場で傷ついた周瑜に包帯をまくシーンでも、艶かしく指を体に這わせてユターーっとしかも必要以上に体を密着させてエロ声の吐息でエロスを振りまいています……。

 ウゼーーーこの嫁ウゼーーーー。

 おまけに小喬に恋心を抱いているのが敵の大将である曹操(そうそう)で、宴会で見かけた「ある角度で見た時だけちょーっと小喬に似てる」という女を囲い、コスプレ・イメージプレイに興じるというテイタラクっぷり。

 「あかん!その角度はイマイチやからもう一回やり直せ!」とか言っちゃう曹操、ダッセッ!きんもっ!そんなの曹操じゃないよっ!
 あ、どうでも良いですけど、「小喬」って一瞬「小橋」に見えますね。もういっこどうでも良いですけど、孫権(そんけん)役の彼は「痩せたピエール滝」でしたね。

最後に

概ねそういう映画です「レッドクリフ」は。つまり面白いですよ!何度かめさめさ笑えましたよ!PART2も観なくては。■■

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