「イングロリアス バスターズ」を観た感想は『最高の下衆映画』だった

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タランティーノの「イングロリアス・バスターズ」を観ました。話の大枠は、所謂「ナチもの」だったので、ナチスの非道っぷりを粉砕する痛快娯楽作品なんだな、と思ったらタランティーノの悪ふざけ満開の史実改変バカ映画でした!これはもちろん褒め言葉で、かつ映画としてのクオリティは高い作品である事は間違いなしですよ。

基本情報

イングロリアス・バスターズ [Blu-ray]

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クエンティン・タランティーノ監督×ブラッド・ピット主演で放つ戦争アクション!ナチス占領下のフランス。家族を殺された少女ショーシャナは劇場支配人として身分を隠し、ナチス根絶の復讐計画を進める。時を同じく、アルド・レイン中尉率いるユダヤ系アメリカ人特殊部隊が、各地でナチスの極秘ミッションに参加する。それぞれの作戦は、ヒトラー総統を招いたナチのプロパガンダ映画の上映会で交錯する…。

感想

全体の構成としては章立てになっており、全5章です。シーンとしてしっかり分けられています。1章登場の主要キャストはナチのボスキャラ、ハンス大佐だけなのですが、恐ろしく緊張感が張りつめたシーンになっています。ハンス大佐のキャラクタを印象づける仕掛けだらけの脚本も秀逸ながら、俳優クリストフ・ヴァルツの演技が最高でした。

 ナチの将校というのは大抵の場合、冷酷非情で知的なイメージがフォーマットとなっていますよね。もちろんその基本ラインは踏襲しつつやたらにコミカルな側面も混ざっていて、それが任務遂行の為に手段を選ばない冷ややかな怖さをより強調しているんです。これがめさめさ怖い。

 ちょっと前までにこやかに談笑し「ああ、ナチにも話の判る奴がいるのかな」と思い始めた瞬間に顔から表情が消え、確信のピンホールショットを打ち込んでくるものだから、相手は感情をコントロールする事が出来なくなってしまう、という演出。シリアスを表現する上で必要不可欠なのはユーモアであるというやり口は、タランティーノの常套手段です。観客の心理はあっちゃこっちゃにブンブンと振り回されるものだから、物凄く疲れます。が、それが楽しいのです。

 2章になって、やっとブラッド・ピットが登場しイングロリアス バスターズの結成となるのですが、これもまたタランティーノらしいと云うかメンバーの誰一人として格好良くないのです。リーダーのブラピも、やたらに訛りのキツいうさん臭いおっさんとして描かれ、発言の内容もほとんど輩みたいな粗野っぷりで、到底物語の主人公らしくないキャラクタです。

 「ナチをぶっ殺して、頭の皮を剥いでこい。ナチ100人の頭の皮を持ってくるんだ。」
 「殺したナチの手足を切断して、俺たちの仕業と判るようにしろ。ナチを震え上がらせるんだ。」
みたいな事を、半笑いのようなテンションでまくしたてるブラピ。不謹慎さが楽しいですねーw。

 実際にバスターズは次々とナチを狩って、しっかりと死体から頭の皮を剥いで行きます。さりげないカットではあるものの、しっかりと画面で見せているのでグロ注意ですよ。ただ、転がっている死体の頭の真ん中の皮が剥がされている絵はなんだか滑稽で笑えるし、剥いでいるバスターズ達が楽しんでいるものだから、陰惨なイメージはないんですよね。まったくもって不謹慎な連中なのです。

 とまあ、こういうふざけた空気の中、物語はいくつかの思惑が絡み合い意外な方向に転がって行きます。単なる不謹慎だけではない、映画らしいドラマがダイナミックに展開し、切なさと爽快感と下衆い笑いを提供してくれます。名作として後世に語り継がれるようなかしこまったモノではありません。でも映画の楽しみ方として絶品です。観たほうがいいですよ!久しぶりに「レザボア・ドッグス」を観たくなったなー。■■

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